仕事に出かける前に、ふと振り返ったら、ぼくのいない食卓を見た。
3人がぽっかりと空いた穴を気にしないように、それでいて気になるような背中をしていて。
「ああ、これがぼくのいない食卓か」
と見てはいけないものを見たような気がした。
ぼくが「活躍」と呼ばれることをしているとき、家はこうなっているんだと。
あれ、これは俺の求めていたものだったろうかと、ふと我に返った。
どこかで、なかなか家にも帰らないような忙しい生活がスゴイのだと思っているところがあった。
「全国を飛び回る」ことがカッコイイのだと勘違いしているところがあった。
けれども、その結果がこれなんだと。
あれ、これは俺の求めていた生活なのかと自問した。
別に子どもも寂しくないのかもしれない。
じぶん自身の「さみしさ」を投影しているだけなのかもしれない。
いずれにせよ、「これ」が俺の求めるものなのかと、空を仰いだ。
必要でもないものを追いかけて手を伸ばしているうちに、大切なものが指のすきまからこぼれてく。
小さな幸せに安住するのも面白くない。
けれども大きな幸せを求めすぎるのも、違う気がする。
そのはざまで揺れながら今日もキーボードを叩いてる。