ハラだハラだと言ってますが、いったい具体的に「ハラ(丹田)」とは何なのか。

そんなことを現在体感できる範囲で解説してみたいと思います。

 丹田とは

 

「丹田」と一般に呼ばれているのは「下丹田(しもたんでん)」のことです。

実際には「上丹田(かみたんでん)」「中丹田(なかたんでん)」「下丹田(しもたんでん)」の3つがあります。

 

丹田は身体の内部と外部をつなげるポイントとなります。

 

 経穴(ツボ)としての丹田の場所

 

丹田には経穴(ツボ)としての「丹田」と、身体感覚としての「丹田」があります。

 

まずは経穴(ツボ)としての丹田の場所を確認していきましょう。

上丹田は眉間です。

中丹田は乳首を結んだ線の中心にあります。

 

 

そして下丹田は恥骨から自分の指2本分上のところに、そーっと皮膚を撫でていくと「スポッ」と手が収まる位置があって、そこが下丹田の場所になります。

ちょっと、ホネホネの図なのでわかりにくいですが・・・

 

 身体感覚としての丹田

 

一方で身体感覚としての丹田は、もう少し奥にあります。

お腹の表面ではなく、身体の奥。

仙骨の前、肛門の少し上くらいの場所になります。

 

 ハラ感覚と丹田感覚

 

丹田感覚は、ハラ感覚の発展したものだとハラ生き道では捉えています。

 

ハラ感覚とは、おもに腹部のインナーマッスル群が適度に収縮した状態において生じる感覚です。

 

 

丹田感覚は、そのインナーマッスル群の「収縮の焦点」が一か所に定まってくることで生じてくる感覚です。

図1 ハラ感覚

 

図2 丹田感覚

 

つまりインナーマッスル群の協調の度合いが高まり、身体の運用効率が上がるということです。

 

 丹田感覚と「動きの中心」

 

丹田感覚のある場所を中心として動くことで、「動きのブレ」が少なくなります。

インナーマッスルどうしの協調性が低い場合は、コマの軸が中心からズレたようになり、運動効率が下がります。

 

インナーマッスルの「収縮の焦点」が丹田という一か所に定まるということは、コマの中心軸がバッチリど真ん中になることになり、運動効率が高まります。

 

 丹田感覚の仕組み

 

ハラ感覚はインナーマッスル群の収縮によって起こりますが、丹田感覚は筋肉の収縮によって起こるわけではありません。

 

丹田感覚とは「スキマの感覚」です。

上半身と下半身を分けるライン。

右半身と左半身を分けるライン。

その2つのラインの交差する場所こそが丹田なのです。

 

 丹田を鍛えるには

 

ですから丹田というのは鍛えることができません。(存在自体が「無い」ので)

丹田というのは、カラダをきちんと分割して、かつ統合的に使えるようになったときに生じてくる感覚なので、一般的な筋力トレーニングでは鍛えることが出来ないのです。

 

しかし「ハラ感覚」であれば鍛えることができます。

「ハラ感覚」は、インナーマッスル群の収縮なので、インナーマッスルを太くすることで「ハラ感覚」を強めることができます。

 

しかし実際に運動効率を上げるためにはインナーマッスルを増やして太くすることよりも、インナーマッスルどうしの協調性を高めるほうが効果があがります。

 

たとえば武道・武術における果たし合いでは、どれだけ筋肉が太く筋力があっても、身体運用の効率が高く「早い」動きができるものが勝ちます。

 

「スポーツ」であれば筋力が多いほうが優位かもしれませんが、「道」において筋肉の太さというのは優先すべき事項ではないと考えます。

 

それでも鍛えたい方はコチラを参考にされてください。

 

 丹田と心理(感情処理の機能について)

 

丹田には感情を処理する機能があります。

 

怒りや悲しみ、落ち込み、喜びなどの感情は筋肉の緊張としてメタ的に表現することができます。

 

たとえば怒りであれば、眉間の筋肉が収縮し、肩が上がり、腹筋が硬くなるというような、身体における具体的な変化が現れます。

 

そしてその筋肉の収縮のさせ方は、身体の運用効率という意味合いで言えば、非効率的だと言えます。

 

一般に「ネガティブな感情」と呼ばれるものに支配されているとき、インナーマッスルよりもアウターマッスルに緊張が起こりがちです。

 

そうなると、アウターマッスルはインナーマッスルよりも連動性が弱いので、どうしても運動効率が落ちてしまうわけです。

 

そこからインナーマッスルを活性化させ、「収縮の焦点」を丹田に定めていくことで、身体運用の効率が高まります。

 

するとアウターマッスルの不要な緊張が解除されていきます。

と同時に「ネガティブな感情」と呼ばれるものも解消されていきます。

 

この一連の流れを古来より日本人は「ハラにおさめる」と表現してきました。

 

 丹田を鍛える呼吸法

 

前述したように丹田というのは鍛えることができません。

よって丹田を鍛える呼吸法というのは存在しないというのがハラ生き道の見解です。

 

しかし呼吸法の上達・習得によってインナーマッスル群の操作性が高まるとカラダを「分割・統合」して使えるようになり、丹田感覚が精妙になっていくことはあると思います。

 

 「鍛える」という概念から脱する

 

そもそも「丹田を鍛えたい」と感じる人は自己否定からスタートしていることが多いです。

そして「丹田依存症」になっていることもある。

 

「丹田さえ鍛えれば強くなれる」

「丹田を鍛えれば幸せになれる」

「自分は弱いから丹田を鍛えなきゃ」

「丹田を鍛えて超人になりたい」

 

というような「丹田コンプレックス思考」というのは、本来の「道」のあり方からブレています。

 

丹田(ハラ)の世界観は、一元論です。

 

 

「勝つ負ける」

「強い弱い」

「よいわるい」

 

二元論の世界観に囚われていると、「丹田を鍛える」という”修業”の発想から脱することができません。

 

 

 ハラ意識で生きる

 

「ハラ意識で生きる」ことが「ハラ生き」です。

そして「ハラ意識」とは「ハラ(下丹田)に意識がある状態」ということです。

 

「意識」については、また別の論で書きますが、ここでは「人間の本体」であり、「視点・視座(どこから見るか)のスタート地点」と考えてください。

 

その「意識」をハラ(下丹田)にピントを合わせる。

 

その精度と頻度が高いほど、ハラ生きレベルが高いということになります。

 

 ハラで動く

 

「ハラで動く」ことをすると「ハラ(下丹田)に意識がある状態」が保たれやすいです。

 

「ハラで動く」とは、すべての動作の中心をハラに置くということです。

 

ハラで立つ、ハラで座る、ハラで歩く、ハラで触れる・・・

 

そういうことができるようになってくると、ハラ(下丹田)に居る時間が長くなってきます。

 

それは「ハラ生き」がさらに進んだということになるのです。

 

「ハラ(下丹田)」で動くことのコツは、コチラでさらに詳しく学べます。