今日は「ハラ」や「和の礼儀作法」に深く関わる「インナーマッスル」について書いてみたいと思う。
なお、以下に論ずることは、おぜっきー個人の試論であり「正解」ではないことを記しておく。
インナーマッスルとは
そもそも筋肉を「インナー」と「アウター」に分けることすらおかしいという論説もあるが、ここではあえて分かりやすくするために「インナー」と「アウター」を弁別してみたいと思う。
ひどく大雑把に
インナ―マッスルとは、骨に近い筋肉、アウターマッスルとは皮膚に近い筋肉と考えてもらって差し支えないだろう。
ただ勘違いしてはいけないのは「インナーマッスル=体幹の筋肉」ではないということだ。
たしかに、体幹部には多くのインナーマッスルが存在する。
けれども、インナーマッスルは足裏や指先にも存在する。
だからこそ「体幹部、中心部VS末端、先端」という捉え方ではなく、「内側VS外側」「深層VS浅層」という捉え方が重要になってくる。
インナーマッスルのはたらき
ぼくの考えるインナーマッスルの働きは、まず第一に「姿勢を保つこと」である。
それも身体をがっちり固めて姿勢を保つのではなく、ゆらゆらとバランスを取りながら姿勢を保つ働きがある。
インナーマッスルの中でも、姿勢に関連する筋肉は「抗重力筋」とも呼ばれる。
ここは重要なポイントなので、ぜひ覚えておいてほしい。
それから、「身体を壊さずに大きな力を出す」のもインナーマッスルの働きである。
たとえば「大腰筋」は上半身と下半身をつなぐ人体最大の筋肉と言われるが、大きな筋肉だからこそ、大きなエネルギーを発生させることができる。
そして第2の機能と矛盾しそうなのが第3の機能である「ていねいで優雅な動きを生み出す」ことである。
これは第1の機能である「姿勢の安定」とも関係があるが、体幹部の安定があるからこそ「やわらかで優美な動き」が生み出せる。
指先にもインナーマッスルがあると先述したが、指先のインナーマッスルは「ていねいな動き」に関連が深い。
第4の機能は「呼吸」である。これは横隔膜に大部分を依存するが、肋骨周りのインナーマッスルは呼吸を補助する。
第5の機能が「瞬発力」である。ここはまだ研究段階で深いところが分からないが、動きの「キレ」を生み出す瞬発力はインナーマッスルから生まれると思われる。
インナーマッスルと姿勢と心理
ここまで読んで「そうか、インナーマッスルを鍛えれば姿勢がよくなるんだ!」と捉えるのは、いささか短絡的だ。
話はそんなに単純ではないということは、筋肉の性質を考えてもらえば分かる。
カンタンに言えば、筋肉というのは脳の電気信号によって動いている。
つまり、どれほど筋肉量があろうとも、ちゃんと電気信号が伝わらなければ、筋肉は動かないということだ。
それは「麻痺」などの症状を考えてもらえれば分かるだろう。
ここで「姿勢がよい」ということをもう一度考えてみる。
「姿勢がよい」というのはインナーマッスルが適切に連動して働き、それをアウターマッスルが邪魔しないということだ。
そして「適切にはたらく」というのは、脳から適切に電気信号が送られることを指す。
ではどうしたら「適切に電気信号が送られる」のか。
それを考えるためには「適切に電気信号が送られないケース」を考えてみるのがよい。
たとえば「落ち込んでいるとき」「自信を喪失しているとき」
脳から適切な電気信号が送られず、インナーマッスル(抗重力筋)がオフになる。
すると、
こうなります。
もしかしたら、このオジサン、インナーマッスルの筋肉量はちゃんとあるかもしれない。
でも、脳からの電気信号が動かなければ、こうなってしまうのです。
しかし逆に自信を回復し、元気になってくると姿勢はこうなったりする。
ちなみに、「力こぶ」はアウターマッスルに属しており、ここに力を入れると姿勢が弱くなり、崩れます。
なので、そこは見ないでオジサンの体幹部に注目してほしい。
「自信の回復」と「姿勢」が連動している。
つまり「根本的な姿勢の進化」には「心理」の面も考えていく必要があるということだ。
そして、その最大のポイントは「肯定感」となる。
「OK/YES/いいね!」
この身体感覚こそが「インナーマッスルが活性化している」、「脳から適切な電気信号が送られている状態」なのである。
不随意なインナーマッスル
インナーマッスルというのは、もともとは「不随意筋」と言って「思ったようには動かせない」筋肉に属している。
だからこそ、「心理」や「潜在意識」に多大な影響を受けるのだ。
落ち込んでいるときに、無理に姿勢をよくしてもうまく力が入らないのは、インナーマッスルが「不随意である」という性質による。
また無理に姿勢をよくしようとして腰を痛める人がいるが、それも「姿勢筋」がもともとは「不随意である」ことによる。
動かし方も知らずに無理に動かしたら痛めるのは当然である。
しかし、「随意筋」と「不随意筋」というのも、実はあいまいな分け方で、はっきりと分けられるものではない。
「随意筋」と呼ばれる筋肉でも、実際には「意の随(まま)に」は動かせていないし、「不随意筋」でも、ある程度うごかせるものもある。
その代表格が「横隔膜」で、自動で不随意にも動くし、意図的に動かすこともできる。
ヨガの達人ともなれば「不随意筋」の代表格である「心筋」さえも止めることができるという。
となれば、運動にかかわるインナーマッスルも、訓練によって自在に動かせるようになるはずだ。
そして「インナーマッスルを自在に動かせるようにする訓練」こそが「ハラ生きメソッド」であり「和の礼儀作法」なのだ。
「和の礼儀作法」において、まず大事なのは、これまでのアウターマッスル的な「動きのクセ」を抜くこと。
それから「インナーマッスルを連動させた動きと感覚」を身に着けていくことだ。
それはすなわち「意のままに」は動かなかった筋肉を、「意のままに」動かす練習なのだ。
インナーマッスルが自在に扱えるようになれば姿勢は格段とよくなり、呼吸も変わり、怪我をしにくく疲れにくくなる。
それが「和の礼儀作法」の凄さなのだ。
インナーマッスルと心理、ふたたび。
そして、面白いことにインナーマッスルを自在に動かせるということは、「心の自由度」もあがるということだ。
つまりこれまでは「落ち込む→インナーマッスルがオフになる→姿勢が崩れる→さらに呼吸がおかしくなる→さらに姿勢が崩れる」という流れしかなかったのが
「和の礼儀作法でインナーマッスルを活性化→姿勢が戻る→呼吸が戻る→元気になる」という流れを作ることができるようになるということ。
すなわち、「和の礼儀作法」でインナーマッスルを扱えるようになるということは、「身体も心も自由自在に近づいていく」ということなのだ。
「型」や「作法」という、いっけん堅苦しく思われがちな世界は、実は「自由への扉」なのである。
今年、ハラ生き研究所では、その「和の礼儀作法」を伝え、かつ「和の礼儀作法」を伝えられる人を育てたいと思っています。
インナーマッスルの連動の凄さと、それを伝える活動にご興味を持ってくださった方は、まずはぜひ体験会にお越しいただければと思います。
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